アリエッタは再び、なぜ? と思った。なぜ彼女が死ななければならないのか?
 ファータを笑う意地悪な妖精の言葉を借りるのなら、それは運命だということらしい。
もっともファータのことを蔑む妖精は、奇跡だと言った。彼女がここまで生きてこられ
たこと自体が、本来ならあり得なかったことなのだと。

「アル?」
「……え?」
「変な顔してる」

 大好きなチョコラータ・カルダではなく、ハーブティーを飲みながらトルティニタは
心配そうにアリエッタの顔を覗き込んだ。アリエッタはなんでもないという様子で首を
横に振り、手元のカップを手に取った。

「これ、ありがとう」
「ん? ああ、これもありがと」

 互いに二つのカップを眺め、二人は少しだけ笑った。

「ね、その本面白いの?」
「……そうだね。多分ね」
「多分って?」
「おかしくて笑えるようなお話じゃないのは確か、かな」
「……ふーん」

 なにか含むような相づちを打って、トルティニタは首を傾げた。それから悪戯っぽい
顔で訊ねた。

「もう読み終わったの?」
「えっと」

 膝の上の本をぱらぱらと捲り、アリエッタは残りのページを確かめる。

「あと、もうちょっとあるかも」
「えー?」
「続きは明日にしようか?」
「でも、読みたいって顔してる」
「ん、ちょっとね」
「じゃあいいよ。読んじゃいなよ」

 拗ねるでもなく、あきらめるわけでもなく、トルティニタは自然にそう言った。トル
ティニタのわがままな面も、そうした素直な面も、全てを知っているアリエッタは、心
の底からそれを愛おしいと感じていた。だからこそ、あえてその優しさに浸るように、
再び本を開いた。
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